全天を覆う X 線の起源を探る -- X 線背景放射の正体は何だ

X 線背景放射とは

観測というのは、ふつうは興味のある天体に望遠鏡を向けて行います。しかし、目立った天体がない場所を観測しても、視野いっぱいに広がるような放射が見つかります。エネルギー 100 から1000 電子ボルトの X 線の 60% 以上は「超軟 X 線背景放射」と呼ばれる広がった放射によるものなのです。全天どこを見てもこの背景放射が見えるのですが、その起源は 30 年ものあいだ謎に包まれていました。私たちのすむ銀河 (銀河系) からの X 線とはるか彼方からの X 線が両方見えているのだと考えられていますが、それぞれどの程度を占めているのか、どのような物質が X 線を出しているのかを知るのは簡単ではなかったのです。

すざくが明らかにする背景放射

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中心は ROSAT 全天探査による 3/4 キロ電子ボルト帯の画像 (Snowden et al., 1995, ApJ, 454, 643)。色の違いは明るさの違いを表す。四隅に示したのは「すざく」衛星の CCD カメラ (XIS-BI) で得られた X 線スペクトル。横軸は X 線のエネルギー (電子ボルト)、縦軸は X 線強度。精度よくエネルギーを決めることで、各領域の放射がどのような元素によるものかがはっきりとわかる。

上の画像の中心は超軟 X 線背景放射の分布です。私たちの住む銀河の構造 (銀河系円盤、バルジ、過去の超新星爆発の名残) が見えており、少なくとも銀河系から来る X 線があることがわかります。さらに起源を詳しく知るにはエネルギーを決めることが重要です。X 線のエネルギーからは X 線を出している物質に含まれる元素の量や温度がわかるからです。これは「すざく」衛星のCCD カメラの得意技です。図 1 の各四隅に 4 つの方向の X 線のエネルギーと強さの関係を示しました。酸素、ネオン、鉄に特徴的な X 線が見え、場所によっ
て強さが違うことが一目瞭然です。さらに明るさの時間変化も調べ、「すざく」衛星は以下のことを明らかにして来ました。

今後の展望

X 線を使った精密な観測は、これまであまり知られていなかった高温ガスの分布を明らかにする唯一の手段です。超軟 X 線背景放射は、近くからの X 線も遠くからの X 線も足し合わされたものです。これを理解するのは簡単ではありませんが、太陽系、銀河系、そして銀河団を越える大構造まで、あらゆるスケールの高温ガスの分布を知る手がかりとなりうるのです。まだまだたくさんの疑問が残っています。銀河で生まれた高温ガスは銀河と銀河の間にまきちらされると考えられていますが、どの程度広がっているのかはわかっていません。また、何億光年にもわたって広がる、銀河や銀河団を結ぶ高温ガスの大構造が存在するとも言われていますが、その証拠は見つかっていません。「すざく」衛星による観測がこういった謎に答えていくと期待して、私たちは研究を続けています。



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