太陽風起源の電荷交換反応

謎のX線放射源

1990年代に「軟X線」(波長の長いX線)で全天探査を行っていたX線天文衛星「ROSAT」の観測データには、1〜2日周期で変動する成分があり、大きな謎となっていました。しかし、1996年の百武彗星を皮切りに、さまざまな彗星からX線が観測され(Cravens et al. 1997)、その調査が進む中で、謎のX線の正体が太陽風中の高電離イオンと彗星に存在する中性物質との間の「電荷交換」による放射だと判明しました。

電荷交換反応とは?

中性の原子から電子が剥がれた状態をイオンと言い、このイオンと中性物質が接近すると中性物質中の電子がある確率でイオンに移ります。これを電荷交換反応と言い、移動した電子が高いエネルギー状態に入るため、電子がより低いエネルギー状態に落ちて行く過程でX線などが放射されます。このとき放射されるX線は特徴的でカロリメータなどの高エネルギー分解能検出器で観測することにより電荷交換起源のX線を同定することが可能です。

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cravens et al. 2002より

すざくが捉えるSolar Wind Charge eXchange(SWCX)

X線天文衛星「すざく」により2005年9月2日、黄道の北極方向から届くX線を観測していました。このとき、太陽では大規模なフレアが発生しており、その影響で発生した太陽風はラグランジュ1で観測していたACE衛星にはっきりと観測されました。観測チームが太陽フレア発生時とその収束後の観測データを比べてみたところ、電荷交換反応に特徴的なX線放射が明らかにフレア時に増大していることが分かり、太陽風電荷交換の重要な観測的証拠となりました。

さらなる研究

電荷交換によるX線放射を調べることにはいくつかの意義があります。1つ目は、惑星大気の分布やフレア時の膨張など、惑星周辺および惑星間空間にひろがる希薄な物質の研究に役立つことです。2つ目は、X線放射の強度比から太陽風の成分を間接的に検出できることです。そして3つ目、もっとも重要なのは、こうしたX線放射が遠くの天体をX線で観測するときにどれだけ影響するかを知ることです。これは我々のグループのテーマである広がったX線源を観測する上で非常に重要となります。
現在、満田・山崎研究室では地球惑星大気の専門家らと共同で太陽風起源の電荷交換反応を定量的に見積もる研究を行っており、この結果は近く論文となる予定です。

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