Clusters-宇宙最大の天体、銀河団のダイナミックな進化にせまる

銀河団と宇宙進化

私たちの太陽系のある天の川銀河は、実はおとめ座銀河団の一員です。では、この銀河団とはどのような天体なのでしょう。それは千個もの銀
河が群れをなす宇宙最大の天体です。しかも、これまでに一万個以上も発見されていて、宇宙全体の進化を調べるのになくてはならない存在になっています。ここでは、「すざく」衛星でせまる銀河団の驚くほどダイナミックな進化について紹介します。

銀河団を目では見えないX線で観測すると、なんとそこには1億度にも達する高温プラズマの塊が明るく輝いています。しかも、この高温プラズマを一つの場所に閉じこめておくためには銀河の重力だけでは足りません。いまだ正体不明の暗黒物質と呼ばれる物質が大量に(太陽の質量の約100兆倍も)潜んでいるのです。さて、こんな巨大な天体が一体どうやってできたのでしょう。

銀河団の進化

理論によると、銀河団は宇宙の100億年を超える長い歴史の中で成長を続けてきたと予言されています。そして、その成長の様子はとても激しいものです。銀河団同士が数千キロメートル毎秒もの猛スピードで衝突しては合体し、それを繰り返しながらさらに巨大な天体へと育っていくのです。衝突が起きると、銀河団中のプラズマがおよそ千キロメートル毎秒ものスピードで50億年間も運動し続けるといわれています。しかし、今のところこれを裏付ける証拠はつかめていません。そこで、我々は優れた感度を持つ「すざく」衛星を用いることで、この検証に挑みました。

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図1:「すざく」衛星によるケンタウルス座銀河団のX線画像。
4600万度の高温ガスが広がっている。
図2: ケンタウルス座銀河団中の高温プラズマからのX線スペクトル。横軸がX線のエネルギーを、縦軸がX線の強度を表す。約6.6キロ電子ボルトにある山が鉄元素からの特性X線。なお、エネルギー(キロ電子ボルト)の逆数に約12.4をかけ算すると波長(オングストローム)になる。

最初に観測したのは我々から1.6億光年の距離にある、ケンタウルス座銀河団です(図1)。高温プラズマの運動の測定には、ドップラー効果を活用します。原理は救急車のサイレンでおなじみのように、プラズマから放射されるX線の波長が我々から遠ざかっていれば伸び、逆に近づいていれば縮みます。高温プラズマからは様々な元素に由来する特性X線が放射されますが、なかでも鉄元素からの特性X線がこの測定に向いています。ただし、たとえプラズマが千キロメートル毎秒ものスピードで動いていても、その波長は元々の波長に比べてわずか0.3%しかずれません。

我々は「すざく」衛星のXIS検出器を用いることで、ケンタウルス座銀河団を約50個の領域に細かく分け、それぞれの領域を精密に調査していきました。そして図2のように鉄の特性X線をはっきりととらえ、波長を精度良く測定することに成功したのです。それからドップラー効果による波長のずれを調べると、高温プラズマの速度は大きくても1400キロメートル毎秒であると求まりました。これは過去の測定の二倍も良い精度を達成しています。今後もこの方法を使いながら「すざく」衛星により銀河団の謎を解明していきます。



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