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「すざく」衛星がとらえた炭素合成の現場

〜平凡な星の晩年を飾る惑星状星雲は、生命の源〜

2006年3月26日

村島未生、国分紀秀、牧島一夫(東大理)、古徳純一(東工大)、村上弘志(JAXA宇宙研)、松下恭子(東京理科大)、林田清(阪大理)、國枝秀世(名大理)、「すざく」チーム

本研究は、日本天文学会2006年春季年会にて記者発表しました。
事前配布資料(PDF, 4.2MB)
図をクリックすると解像度の高い図を表示します。


概要

生命の源となる有機物を形づくる炭素は、太陽のような平凡な星の内部で合成され、宇宙空間に放出されたと考えられます。星の晩年には、放出物質は広がった「惑星状星雲」として輝きますが、そのとき物質の一部が高温ガスとなってエックス線を放射することがあります。私たちは2005年7月10日に打ち上げられた、日本5番目のエックス線天文衛星「すざく」により、はくちょう座にある BD+30°3639 という惑星状星雲を観測したところ、この天体は、炭素イオンの出す波長 3.4ナノメートルのエックス線を、強く放射していることを発見しました。ガス中の炭素イオンの数は、酸素イオンの数の40倍にも達しており、星の内部で核融合によりへリウムから作られた炭素が、宇宙空間へと放出される現場をとらえた、貴重な結果と考えられます。


1. 宇宙には100種類を超すさまざまな元素が存在

2. 星の内部での元素合成


3. 可視光でみる惑星状星雲


図3: ハッブル宇宙望遠鏡で見た惑星状星雲

4. 惑星状星雲は、平凡な星の最期の姿


図4: 惑星状星雲の構造

5. 日本の5番目のエックス線天文衛星「すざく」

「すざく」には、エックス線望遠鏡と、3種類のエックス線検出器が搭載されています。私たちの研究では、これら3種類のうち、エックス線CCDカメラを用いました。


図5: 「すざく」衛星とその搭載機器。最上部にX線反射望遠鏡が5台搭載されており、衛星下部の焦点面に4台のX線CCDカメラと1台のX線マイクロカロリメータがある。またエネルギーの高いX線を観測する硬X線検出器が搭載されている。

6. 2005年7月10日、「すざく」打上げ

M-V ロケット 6 号機によって、内之浦宇宙空間観測所から打上げられました。


7. 「すざく」による BD +30°3639 の観測

「すざく」は2005年9月21日、はくちょう座にある代表的な惑星状星雲の1つ、 BD +30°3639 を、およそ1日かけて観測しました。


エックス線は、可視光で見えるリング状星雲の内側 (左図、点線) から放射されていることが知られていました。そのエックス線を、「すざく」のCCDカメラがとらえました (右図)。

8. 炭素イオンの出すエックス線を検出することに成功

それぞれのイオンからは、ある決まったエネルギー(あるいは波長)のエックス線光子が放出されます。「すざく」で得たエックス線スペクトルには、炭素・酸素・ネオンからのエックス線が、輝線としてはっきりと見えています。とくに炭素からのエックス線がひじょうに強く、酸素の約40倍もの大量の炭素が存在していることが分かりました。


図8: 「すざく」CCDカメラで得たBD+30°3639のエックス線スペクトル。宇宙の平均的な元素組成比を仮定した場合の計算結果を、点線で重ねてあります。カッコ内の数字はイオンの価数を示します。

9. 「すざく」は炭素合成の現場をとらえた

10. 結果の意義とまとめ


この記事に関連した情報は東京大学 大学院理学系研究科 牧島研究室のページにも掲載されています。
連絡先:
東京大学 大学院理学系研究科 牧島一夫(まきしまかずお)