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天の川に潜む超巨大ブラックホールからの“X線”雄叫び

2001年9月5日

Frederick Baganoff, Mark Bautz, George Ricker (MIT), Niel Brandt, George Chartas, Eric Feigelson, Gordon Garmire, Leisa Townsley (Penn State), 前田 良知(宇宙科学研究所), Mark Morris (UCLA), Fabian Walker (CalTech)

"Rapid X-ray flaring from the direction of the supermassive black hole at the Galactic Centre", Baganoff, F. K., Bautz, M. W., Brandt, W. N., Chartas, G., Feigelson, E. D., Garmire, G. P.; Maeda, Y., Morris, M., Ricker, G. R., Townsley, L. K., Walter, F., 2001, Nature, Volume 413, Issue 6851, pp. 45-48
本記事の内容は2001年9月5日米国ワシントンDCにて記者発表しました。


夏の夜空を見上げると、はくちょう座からさそり座にかけて、うすくぼんやりと光る光の帯を見つけることができます。いにしえより「天の川」と呼ばれる神秘的な天体でして、その正体は約二千億個もの星のあつまり「銀河系」です。わが太陽もその星の仲間の一つであり、約50億年前に誕生しています。最新の電波や赤外線を使った観測により、この銀河系の中心核には太陽の300万倍もの重さを持つ超巨大ブラックホールが潜んでいるのではと考えられていましたが、確実な証拠をつかむのが困難でした。そこで、我々は「チャンドラ」衛星を銀河系中心方向に向け、その存否の検証を目指しました。

[銀河中心のX線写真]
X線天文衛星「チャンドラ」で撮影された銀河系中心60光年四方のX線図。真ん中に見える一番明るい天体が、銀河系中心核。その正体は太陽の約300万倍もの質量を持つ超巨大ブラックホールだと考えられる。中心核から太陽までの距離は約2万光年。(図の著作権 NASA/MIT/F.Baganoff et al.) [高解像度(150KB) | 中解像度(22KB)]

図は、チャンドラ衛星に搭載されたX線CCDカメラで撮影された銀河系中心領域60光年四方のX線写真です。銀河系中心核に一致する方向にX線天体を検出しました。詳しい解析の結果、この天体は約3時間の間、少なくとも45倍以上増光していることがわかりました。なんでも引き込んでしまうのがブラックホールですから、その大変強力な重力でまわりに漂うガスを吸い込み、ブラックホールにむかって加速することができます。何らかの原因で、超巨大ブラックホールが周辺のガスを取り込み、この加速されたガスに伴う莫大なエネルギー放出をX線の増光現象として世界で初めて捕らえることができたようです。

さらに、増光の時間変化を調べると、約10分程度の時間で小刻みに変動を繰り返していることが新たに判明しました。これは、増光現象を起こしている天体は直径1億5000万キロより小さいことを強く支持します。この大きさは地球から太陽までの距離より小さく、太陽の約300万倍の質量をもつ巨大ブラックホールの半径のせいぜい10倍程度しか離れていないところから放たれていると考えられます。我々はブラックホールの存在を実証する最も確かな証拠を得ただけでなく、我が銀河系の真ん中、最も奥深くからの信号を捕らえたのかもしれません。


連絡先:
宇宙科学研究所 前田 良知 (まえだ よしとも)